バートン・マルキール&チャールズ・エリス『投資の大原則』(日本経済新聞出版)を読みました。
バートン・マルキールといえば『ウォール街のランダム・ウォーカー』
チャールズ・エリスといえば『敗者のゲーム』です。
そんな投資家のバイブルとも言うべき本を書いた2人による共著がこの本。
どちらかというと投資初心者向けに原理原則を平易に語った本ですが、投資経験を積んで慣れてきた方も何年かに一度読み返すべき示唆に富んでいます。
下記のような方にオススメできる本です。
投資の大原則とは
本書のタイトルともなっている「投資の大原則」とは一体なんでしょうか。
ここが本書を手に取るみなさんが最も気になる点だと思います。
本書は以下の5点を投資の大原則として挙げています。
上記の中でも個人的には特に「4.年に一度、資産配分を見直す」は目から鱗というか、新しい知見が得られました。
これについては後述しますね。
若いうちから貯蓄を始め、続けること
ある意味で投資の基礎の基礎です。
投資は種銭が無ければできないですし、借金を抱えながら投資をしても意味がありません。
倹約に努め、貯蓄を始めること、そしてそれを続けることが大事と説いています。
会社や国の制度を有効に活用すること
会社や国の制度を上手に活用して税金を抑えようということを説いています。
実際、資産形成では運用益の多くの部分を税金で持っていかれてしまう点が非常に大きく影響します。
具体的な制度についてはアメリカのものを紹介しているのですが、日本人で活用できる制度には以下のようなものがあると思います。
このような制度を上手に活用しようと言っています。
なんか投資といっても、身近なもののような気がしてきますよね。
「インデックス・ファンド」で分散投資
老後資金を運用するならインデックス・ファンド、これです。
市場以上に賢いものはない
本書は市場以上に賢いものはないと言っています。
バートン氏がウォール街のランダム・ウォーカーで説明しているとおり、プロの投資家でも市場の動きは予測不可能です。
実際に、インデックス・ファンドのパフォーマンスを上回るアクティブ運用のファンドは少ないです。
さらにファンドに支払う運用手数料まで込みで考えると、インデックスを超えるファンドは一握りということがよく知られています。
しかも投資家の側から見ると、好成績を収めるファンドは事前には知ることができないというのが最も致命的な欠点です。
我々が知ることができるのはあくまで事後的なパフォーマンスだけなのです。
この辺りも事例を用いながら詳しく説明しています。
低コストで分散投資できる
個人で多数の銘柄に分散投資をするのは取引コスト(金銭的・時間的)が高くつきます。
またそもそも十分に分散させようとするとそれなりの資産規模が必要になります。
証券投資のコストは大きく2つあります。
- 売買手数料・・・銘柄の売り買いの度に支払う。
- 税金・・・投資による利益(キャピタルゲイン・インカムゲイン)に課税される。
インデックス・ファンドはバイ&ホールドの長期投資が基本なので、売買手数料が安く済みます。
というかそもそも日本にも売買手数料が0円のファンドが浸透しました。
また長期保有ということは売買の度に確定するキャピタルゲインは生じませんから、最後に取り崩すまで課税を先延ばしにすることができます。
取り崩し時の課税もつみたてNISAやiDeCoなどの制度を活用すれば課税されません。
アクティブ運用の手数料は非常に高い
アクティブ運用の手数料は非常に高いです。
しかも厄介なのは、ファンドの手数料は生み出した価値に対して支払われるものではないということです。
通常、手数料は資産の1%といった形で示される。しかし本来、運用手数料はマネジャーの生み出した価値に対して支払われるものだろう。(中略)市場全体のリターンを得るだけなら、誰でも0.05%程度(訳注:アメリカの場合)の手数料を払ってインデックス・ファンド・ETFへ投資すれば簡単に得られる。したがってアクティブ運用の投資家は、インデックス投資を超える手数料をどれだけ払って、それによってどれだけインデックス投資を超える超過収益を得られたか、と考えた方がいい。
バートン・マルキール&チャールズ・エリス『投資の大原則』日本経済新聞出版
本来であれば運用手数料はマネージャーが生み出した価値に対して支払われるべきというのは本当にそうだと僕も思います。
もしも自分が保有しているファンドがインデックス・ファンドと同程度のパフォーマンスしか出せなかったのに手数料が何倍も高かったら「は??」と言いたくなりますよね。
インデックス・ファンドより低いパフォーマンスなど論外です。
年に一度、資産配分を見直す
この点が個人的に一番新しい知見でした。
リバランス=資産配分を見直すことです。
リバランスをするとリスクを下げながらパフォーマンスを上げることができるらしいです。
「リスクに応じたリターンを得る」というのが投資の基本ですが、相反するような気がします。
これについては後述したいと思います。
自分の決めた投資方法を守り、市場の動きは気にしない
市場の動きに対して過剰反応することを諌めています。
「ミスター・マーケットに注意!」という項が面白いです。
- ミスター・バリュー
- ミスター・マーケット
これはベンジャミン・グレアムが初めて言及したキャラクターらしいです。
ミスター・マーケットに惑わされて資産を売買していると、損してしまうということです。
本質的な示唆としては、大多数の投資家と同じ行動を取るのは避けるべきということです。
個人的に注目したポイント
この本を読んで個人的に注目したポイントをご紹介していきたいと思います。
リバランスでリスクを軽減しつつリターンを増加することができる
字面だけだとなんとも突拍子もない感じがするし、直感的にも理解し難いです。
リバランスというのは、自分の資産の配分比率を定期的にチェックすることだ。望ましいと思う資産配分から外れているなら、元に戻すことだ。リバランスをすると、投資資産のリスクを軽減し、多くの場合、リターンは増加する。
バートン・マルキール&チャールズ・エリス『投資の大原則』日本経済新聞出版
数値例が掲載されていましたのでご紹介します。
ポートフォリオ 株式60%:債券40% | 年平均リターン | リスク (変動性) |
毎年リバランスした場合 | 8.46% | 9.28 |
リバランスしなかった場合 | 8.08% | 10.05 |
株式はラッセル3000株式インデックス・ファンドで、債券はリーマンUSインデックス・ファンドで運用という仮定です。
確かに、リバランスしたほうがリスク(変動性:標準偏差)を抑えながら平均リターンが改善しています。
これには本当に目から鱗でしたが、確かにそうかー!とも納得します。
考えると、相対的に値下がりした資産を買い増していくことなので、将来のパフォーマンスが改善するのは当然のような気もします。
上手くいく投資の本質は、要すれば安く買って高く売ることです。
大きな失敗を避けるということ
バフェットの成功の主な理由の1つは、大失敗を上手に逃れてきたことだ。(中略)最悪の事態を避けること。必要もないリスクを取ることで発生するトラブルを避けることは、投資での成功の秘訣だ。多くの投資家は、自分で引き起こした、しかもまったく必要のない重大なミスによって損害を被る。
バートン・マルキール&チャールズ・エリス『投資の大原則』日本経済新聞出版
大きな失敗を避けて、投資を続けられなくなる事態を避けることが重要ということを説いています。
大きな失敗を避けるべきことは、タルムードでも説かれていました。
ちなみに、「ミスター・マーケットに惑わされてはならない!」という話もここで解説されています。
皆さんは多くの投資家が話題にする銘柄が欲しくなるタイプですか?
それとも自分が決めた銘柄を実直にバイ&ホールドできるタイプですか?
まとめ:インデックス運用とリバランスが大事
『ウォール街のランダム・ウォーカー』、『敗者のゲーム』といった投資家のバイブルを著してきた著者による投資の大原則についてまとめてみました。
個人的に重要だなと思うのは以下の点。
(できれば)リバランスする、としたのは僕自身のポートフォリオは現預金を除くと株式100%だからです。
リバランスのしようがありませんが、長期投資の観点からは債券よりも株式のパフォーマンスが圧倒的です。
また僕もまだ30代前半で資産の形成フェーズなので100%株式にしています。
債券はインフレ耐性が低いですからね。
退職間近で資産の取り崩しが近くなったらリバランスを取り入れていかないといけないと思います。
以上、バートン・マルキール&チャールズ・エリス『投資の大原則』の書評でした。
それでは、また。
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